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ユッケジャンとは?赤いスープの辛さと名前の意味

韓国の辛い牛肉スープ、ユッケジャン
目次
  1. ユッケジャンとは?ゆでて裂いた牛肉を煮返す辛いスープ
  2. 焼肉店の「ユッケ」と同じ「肉」?ユッケジャンの名前の意味
  3. ユッケジャンが赤いのはなぜ?コチュジャンではなく油の力
  4. メウンタン・スンドゥブ・ヘジャングクとの違い
  5. ユッケジャンの作り方|家で作るときの流れ
  6. よくある質問

スプーンを近づける前に、立ちのぼる湯気がのどの奥をツンと刺激します。表面には赤い油の膜がゆらゆらと浮かび、その下では手で裂いた牛肉と、とろりと柔らかくなった長ねぎがからみ合っています。ユッケジャンとは、この真っ赤な牛肉スープのことで、韓国では家庭の食卓から街のスープ専門店まで、どこでも出会える定番の一杯です。日本では焼肉店のスープメニューやカップ麺の名前で知っている方も多いはずです。けれども、なぜここまで赤いのか、焼肉店の「ユッケ」と関係があるのかまで説明している記事はあまりありません。そこがわかると、作るときも注文するときも、この一杯がぐっと身近になります。

ざっくり答えると

  • ユッケジャン(육개장)は、牛肉の塊をじっくりゆでて繊維に沿って裂き、粉唐辛子・ごま油・にんにく・醤油で和えてから、ゆで汁に戻して煮るスープです。
  • 赤い色と辛さの正体はコチュジャンではなく、油脂に溶け出した粉唐辛子(コチュカル)です。表面のつやっとした赤い層もここから生まれます。
  • 韓国の農心(ノンシム)が1982年に発売したどんぶり型カップ麺「ユッケジャンサバル麺」は、いまもこのスープの名前と味を受け継いでいます。

ユッケジャンとは?ゆでて裂いた牛肉を煮返す辛いスープ

主役は、一度ゆでてから手で裂き、しっかり下味をつけてゆで汁に戻す牛肉です。韓国の『韓国民族文化大百科事典(한국민족문화대백과사전)』は、ユッケジャンを「よく煮た牛肉を裂いて十分に味付けし、辛く熱く煮たスープ」と定義しています。作り方の項目には、ホンドゥッケサル(ももの赤身)、サテサル(すね肉)、オプチンサル(おなか側の部位)という三つの部位が挙がっています。

おいしさを左右するのは手順の順番です。まず牛肉を大きな塊のまま、柔らかくなるまで煮込みます。肉を引き上げたらスープを冷まし、表面に浮いた脂を取り除きます。続いて赤身を繊維に沿って粗く裂き、刻んだにんにく、粉唐辛子、ごま油、醤油、ほんの少しの小麦粉で和えてから、もう一度スープで煮立てます。

もう一つの主役が長ねぎです。百科事典の作り方では、ねぎを長めに切り、きれいな水でさっと洗って、生の辛みとぬめりを取っておきます。いまの家庭のレシピでは、ゼンマイ(コサリ)やずいき(里芋の茎)、もやしを加えるものも多いのですが、百科事典の作り方にはこれらは含まれていません。味の芯になるのは、やはり牛肉と長ねぎと唐辛子の三つです。

日本の焼肉店で見かけるユッケジャンスープは、店ごとに具や仕立てがかなり違います。韓国の原型をたどると、ふわっとほどける裂いた牛肉と、くたっと柔らかく煮えた長ねぎが中心にある、意外なほどシンプルな料理です。

焼肉店の「ユッケ」と同じ「肉」?ユッケジャンの名前の意味

答えは、同じ「肉」の字です。ユッケジャンは「ユク(肉)」と「ケジャン」に分けて読むことができ、韓国の国立国語院(국립국어원)の『標準国語大辞典』も百科事典も、表記を「肉개醬」としています。焼肉店でおなじみのユッケも、同じ辞典では「肉膾」と書かれるので、どちらも頭の一文字は同じ「肉」です。

「ケジャン」は、ケジャングク(개장국)の別名です。ケジャングクは犬肉のスープで、百科事典は夏のいちばん暑い時期であるポンナル(복날)の季節料理として紹介し、『トングクセシギ(동국세시기)』のような昔の歳時記にも記録があるとしています。ユッケジャンは「ケジャンを牛肉で作ったもの」とよく説明されますが、この系譜は辞典にも百科事典にもはっきりとは書かれていません。ありそうな話として受け止めておくのが無難です。

記録に残っているのは、夏との結びつきです。百科事典はユッケジャンを、ポンナルの季節料理でありながら一年中食べられる料理と説明しています。考え方の土台は、イヨルチヨル(이열치열)、つまり「熱をもって熱を制す」です。蒸し暑い日にあえて熱々のものを食べて汗をかくと、体の代謝が活発になると考えられてきました。暑い盛りに精のつくものを食べるという点では、日本の土用の丑の日のうなぎに近い発想かもしれません。百科事典によれば、よくできた一杯は辛いのにさっぱりしていて、肉の臭みがなく、たんぱく質もたっぷりです。

韓国の葬儀場の食堂で、定番として出されることが多いのもユッケジャンです。赤い色が魔除けになる、といったもっともらしい説明がネットにはたくさんあります。この疑問を取り上げた韓国のニュース解説メディア「취재대행소 왱(チュィジェテヘンソ・ウェン)」の取材に、葬儀文化の機関である한국장례문화진흥원(英語名 Korea Funeral Culture & Policy Institute)の関係者は、赤い色の意味は後から付け加えられた解釈だと答えています。専門の葬儀場が根づいたのは1990年代初めからで、そこに食堂が併設されるようになって、ユッケジャンでもてなす習わしが生まれたという説明です。

ユッケジャンが赤いのはなぜ?コチュジャンではなく油の力

色の正体は、粉唐辛子と油脂の組み合わせです。唐辛子の辛み成分であるカプサイシンは、水よりも油にずっとよく溶けます。粉唐辛子をそのままスープに入れても、赤い粒がぷかぷか浮くだけです。先に油をまとわせると、色と辛さが油脂に移り、その油がひと口ごとに赤い色を運んでくれます。

伝統的な作り方は、この仕組みをさりげなく使っています。裂いた牛肉を粉唐辛子とごま油で和えてから鍋に戻すので、肉そのものが唐辛子の運び役になるのです。さらに一手間かけて、弱火で粉唐辛子をサラダ油などで温めた即席の唐辛子油(コチュギルム)を作り、それで肉や野菜を炒める作り手もいます。日本のラー油と同じく、辛さと色を油に移す発想です。どちらの方法でも、仕上がりの表面にはあのつやのある赤い層が生まれます。

コチュジャンを土台にした料理と味がまったく違うのも、同じ理由からです。コチュジャンは甘みととろみのある発酵調味料で、スープを重たく、濁った感じにしがちです。ユッケジャンは辛さの下に、澄んだ牛肉の旨みがすっと残ります。トッポッキのいろいろな種類を食べたことがあれば、コチュジャンたっぷりのソースの味はご存じのはずです。ねっとりと甘く、まろやかなあの味に比べると、ユッケジャンはシャープで軽く、辛さが最初にパッと来ます。

牛肉のユッケジャン(韓国の辛いスープ) Photo © Korea Tourism Organization

メウンタン・スンドゥブ・ヘジャングクとの違い

「韓国の辛いスープ」としてひとまとめにされがちですが、コクの出し方も辛さの出どころもそれぞれ違います。『韓国民族文化大百科事典』の説明をもとに、土台を比べてみます。

スープ主な材料辛さの出どころコクのもと
ユッケジャンゆでて裂いた牛肉、長ねぎ牛肉に和えた粉唐辛子とごま油脂を取り除いた牛肉スープ
メウンタン魚粉唐辛子とこしょうが中心で、コチュジャンは調味料の一つ。粉唐辛子とコチュジャンの配分は作り手しだい魚
スンドゥブチゲ押し固めていないやわらかい豆腐基本の定義には唐辛子がなく、醤油と塩またはアミの塩辛で味付けなめらかな豆腐
ヘジャングク(ソウル式)牛骨スープ、血のかたまり(ソンジ)、もやしそもそも唐辛子のスープではない骨スープに溶かしたテンジャン(韓国みそ)

ここには意外な点が二つあります。一つ目は、お店でぐつぐつ煮えて出てくる赤いスンドゥブが、百科事典の定義では唐辛子がなくても成り立つ料理の、辛いバリエーションだということです。二つ目は、二日酔いのスープとして知られるヘジャングクのうち、ソウル式のものが本来はテンジャンのスープだということです。ヘジャングクのルーツは、高麗時代末期の中国語会話の教本『老乞大』に登場する醒酒湯(ソンジュタン、酔いをさますスープ)だとされています。

考え方がいちばん近いのはメウンタンです。こちらも辛さの主役がコチュジャンではなく粉唐辛子だからです。違いはたんぱく質で、魚を使い、粉唐辛子とコチュジャンの配分も自由なメウンタンに対して、ユッケジャンは牛肉を使い、作り方も百科事典に手順を追って書かれています。

ユッケジャンの作り方|家で作るときの流れ

できれば前日から仕込むのがおすすめです。牛肉とスープがこの料理のすべてなので、時間をかけるほどおいしくなります。日本のスーパーなら、すね肉や肩バラ(ブリスケット)が手に入りやすく、ほろっとほどけるまで煮込めます。煮えたらスープを冷蔵庫で冷やしておくと、脂が上で固まり、一枚の膜のようにするっと取れます。

次に、牛肉を指で繊維に沿って裂きます。粉唐辛子、ごま油、刻んだにんにく、醤油、少量の小麦粉で和えます。百科事典の作り方と同じ味付けです。長く切った長ねぎはさっと湯通しするか水で洗い、好みの青菜を用意します。脂を取ったスープに全部を戻して煮立て、野菜がくたっと柔らかくなり、表面の油が赤く色づくまで煮ます。

仕上げに醤油か塩で味を調え、ご飯を添えれば完成です。気負わず、ただ待つだけでいいという点では、簡単キムチチャーハンと同じくらい気楽な一皿です。

よくある質問

Q: ユッケジャンサバル麺は本物のユッケジャンと同じですか?

同じ名前でも、中身は「ユッケジャン味」のカップ麺です。農心は1982年、日本式のカップではなく韓国の伝統的なスープ椀(サバル)をかたどった形でこの商品を発売しました。裂いた牛肉と長ねぎのスープではなく、ピリ辛の牛肉風味ラーメンです。日本では「ユッケジャンラーメン カップ」という商品名で全国発売されています。

Q: ユッケジャンの辛さを控えめにしても、味がぼやけませんか?

粉唐辛子は減らしても、牛肉に和えるごま油とにんにくはそのまま残すのがコツです。風味の多くは油脂と香味野菜が運んでくれます。別の種類の唐辛子粉を使う場合は、種類によって辛さが大きく違うので、少量から試すと安心です。

Q: ユッケジャンに小麦は入っていますか?

たいていは入っています。伝統的な味付けには醤油と少量の小麦粉が使われるので、両方の確認が必要です。小麦を避けたい方に作るときは、小麦不使用と表示された醤油を選び、小麦粉を省いてください。

Q: ユッケジャンの長ねぎを先に水で洗うのはなぜですか?

長く切ったねぎをきれいな水で洗うと、生の青くさい辛みと、表面のぬめりがある程度取れます。そのおかげで、スープの中でべたっとしません。

おいしいユッケジャンは、時間をかけた分だけ応えてくれる、ピリッと辛いごほうびのような一杯です。牛肉にはじっくり時間をあげて、あとは唐辛子油にまかせてみてください。