韓国語の発音が難しい理由|ㄱ・ㅋ・ㄲの聞き分け方
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キムチもキンパも、韓国語では同じ音節「김」から始まります。カタカナではどちらも清音の「キ」で書かれますが、韓国の公式ローマ字表記はこの音節を「gim」とつづり、日本の国語辞典である精選版 日本国語大辞典も、キムチの語源を「gim-ci」と記しています。同じ一文字が、カタカナでは「キ」、ローマ字では「g」で書かれるこの小さなずれに、韓国語の発音が難しいと感じる理由がそのまま表れています。日本語には「か」と「が」の2つの箱しかないのに、韓国語のその場所には、平音のㄱ、激音のㅋ、濃音のㄲという3つの子音が並んでいるからです。同じ3分割は ㄷ・ㅌ・ㄸ、ㅂ・ㅍ・ㅃ、ㅈ・ㅊ・ㅉ にもあります。母音やパッチムにも苦労する点はありますが、日本語の耳に「入れる箱がない」のはこの3分割です。安心してほしいのは、これが才能の問題ではないということです。違いを作っている手がかりは3つだけで、どれも練習で身につけられます。
クイックアンサー
- 韓国語はk・t・p・chの音をそれぞれ3つに分けるため、1988年の標準発音法が定める子音19個のうち12個が、わずか4つの音のグループに属しています。
- ㄱ・ㅋ・ㄲの違いは、子音のあとに出る息の量、喉の緊張、続く母音の出だしの高さの3つで決まります。日本語の「か」と「が」を分けているのは、声帯が震えるかどうかです。
- 2019年の研究では、韓国語を知らない日本語話者は濃音を一貫して有声音(濁音の側)として、平音と激音をどちらも無声音(清音の側)として聞き取っていました。
韓国語の発音が難しいのはなぜ?「か・が」の場所に3つの音がある
韓国語の発音が難しいいちばんの理由は、日本語ならひとまとまりに聞こえる音のまん中に、韓国語が線を引いていることです。1988年に定められた韓国の標準発音法は、子音を19個としています。そのうち12個は、口の形が同じで、息と喉の使い方だけが違う「3つ組」の4グループに収まり、さらにㅅとㅆの2つが対になっています。子音の発音を一覧にすると、次のようになります。
| 音 | 平音(예사소리) | 激音(거센소리) | 濃音(된소리) |
|---|---|---|---|
| k | ㄱ | ㅋ | ㄲ |
| t | ㄷ | ㅌ | ㄸ |
| p | ㅂ | ㅍ | ㅃ |
| ch | ㅈ | ㅊ | ㅉ |
| s | ㅅ | なし | ㅆ |
韓国の国立の国語機関である국립국어원の辞書は、この3列をやさしい言葉で定義しています。平音は、発音器官の緊張も気圧も低い状態で出す音です。激音になると、強い息とともに音が出ます。最後の濃音は、喉頭の筋肉を緊張させて出す音で、息はほとんど伴いません。
では、日本語の側はどうでしょうか。日本語の「か」と「が」、「た」と「だ」、「ぱ」と「ば」は、声帯が震えるかどうか、つまり無声か有声かで2つに分かれます。ところが韓国語の3つの音は、音声学者の説明ではどれも無声音で、こうした3分割は世界の言語の中でも珍しい型とされています。3つの音を2つの箱に入れようとすれば、どれかが重なってしまいます。どれとどれが重なるのかが、少し意外なところです。
ㄱ・ㅋ・ㄲの違いは?息・喉・音の高さの3つを聞く
ㄱ・ㅋ・ㄲで変わるのは、子音のあとに出る息の量、喉の締まり具合、続く母音の出だしの高さの3つです。辞書アプリで並べて聞けるように、短い単語を1つずつ挙げます。
- ㅋ:키(ki、背の高さ)。強い息が出て、母音は高い音で始まります。英語の「kite」のkにいちばん近い音です。
- ㄲ:끼(kki、芸能人の華や才気をいう口語)。息はほとんど出ず、喉が締まり、母音はやはり高く始まります。
- ㄱ:기(gi、気・エネルギー)。フレーズの頭では中くらいの息で、喉はゆるみ、母音は低く始まります。母音にはさまれると本当の有声音のgになるので、고기(gogi、肉)は最初の子音がk寄りで、真ん中が本物のgです。
音声学では、この「息」を VOT(voice onset time)として測ります。子音を破裂させてから声帯が震え始めるまでの時間のことです。2023年に発表された研究は、同じ3分割を持つpの仲間(ㅃ・ㅂ・ㅍ)を、韓国語話者4人(女性2人、男性2人)の声で録音しました。
| 測定項目 | ㅃ 濃音 | ㅂ 平音 | ㅍ 激音 |
|---|---|---|---|
| 声が出始めるまでの時間(平均VOT) | 13 ms | 53 ms | 71 ms |
| 母音の出だしの高さ(女性) | 288 Hz | 245 Hz | 326 Hz |
平音と激音を分けているものに注目してください。息の差は20ミリ秒もないのに、ㅂのあとの母音は、ㅍのあとより約80 Hz低く始まっています。男性の声でも高さの順番は同じで、全体が低いだけでした。このデータで見るかぎり、平音は「弱いㅍ」というより「低い音で言うㅍ」に近い存在です。
このバランスは、最近になってできたものです。David Silva氏が2006年に発表した研究は、年齢の異なる韓国語話者36人を調べ、濃音のVOTは1960年代から変わっていない一方で、平音と激音の息の差は縮まり、人によっては完全に重なっていると報告しました。その代わりに違いを運んでいるのが、音の高さです。2020年のJiyoun Choi氏、Sahyang Kim氏、Taehong Cho氏の研究はさらに踏み込んでいます。ソウルの若い女性では、フレーズの頭で息の差が完全になくなり、平音と激音の区別に息をまったく使っていなかったのです。
日本語話者にㄱとㅋが同じ「カ」に聞こえるのはなぜ?
日本語の「か」と「が」は有声か無声かで分かれる2つの箱で、語頭のㄱとㅋはどちらも無声音だからです。2019年に発表されたJeffrey J. Holliday氏の研究では、韓国語を知らない日本語話者は、濃音を一貫して有声音として、平音と激音を無声音として聞き取っていました。ㄱ・ㅋ・ㄲに当てはめれば、ㄲが「が」の側に入り、ㄱとㅋはそろって「か」の側に入るということです。息がほとんど出ない濃音のほうが濁音の側に聞こえるというのは、少し意外かもしれません。
英語話者の耳でも、ほぼ同じことが起きています。英語は語頭のkとgを主に息の量で聞き分けていて、手のひらを口の前にかざすと、「kin」では息が当たり、「skin」ではほとんど当たりません。2023年の研究では、アメリカ英語話者28人が、平音ㅂと激音ㅍをほぼ毎回英語の「p」と聞き取り、どちらも「p」のよい見本だと評価しました。息のほとんどない濃音ㅃだけが割れて、多くの人は「b」、何人かは「p」に分類しています。耳の物差しが「息」でも「声帯の震え」でも、平音と激音が同じ箱に入り、濃音だけが別の箱にこぼれる点は共通しているのです。
ここが、単に「ない音を覚える」より難しいところです。ソウルの若い世代がㄱとㅋを分けるのに頼っているのは音の高さですが、2023年の論文の著者たちは、英語話者は音の高さに敏感でありながら、主に息の量を手がかりにしていると指摘しています。しかもソウルの韓国語は、フレーズの頭にくるこのペアについて、息の手がかりを手放しつつあります。日本語の耳が頼りにする声帯の震えも、語頭のㄱとㅋはどちらも無声なので、区別の役には立ちません。
つづりも助けにはなりません。韓国の公式ローマ字表記では、位置によってㄱもㅋも「k」と書かれます(ルールは下のよくある質問で説明します)。人名には古いつづりも残っていて、一般のルールなら「Gim」と書くはずの苗字 김 が、英語ではいまも「Kim」のままです。カタカナでも「キム」と書かれるこの苗字が実際にどう聞こえるかは、韓国人の苗字の読み方で詳しく紹介しています。
韓国語の発音矯正:ㄱ・ㅋ・ㄲを言い分ける3ステップ
手がかりを1つずつ、子音だけが違う単語のペア(最小対)で練習するのがいちばんの近道です。まずは次の表を、左から右へ声に出して読んでみてください。
| 平音 | 激音 | 濃音 |
|---|---|---|
| 불(bul、火) | 풀(pul、草) | 뿔(ppul、角) |
| 달(dal、月) | 탈(tal、仮面) | 딸(ttal、娘) |
| 자다(jada、寝る) | 차다(chada、蹴る) | 짜다(jjada、しょっぱい) |
| 기(gi、気) | 키(ki、背の高さ) | 끼(kki、華・才気) |
sの仲間はメンバーが2つだけなので、사다(sada、買う)と싸다(ssada、安い)のペアで練習します。
そのうえで、3つの手がかりを次の順番で身につけていきます。
- 濃音の列から息を抜きます。 手のひらを口の前にかざして、ㄲ・ㄸ・ㅃを言ってみてください。手に息が当たらなければ、それが濃音の出発点です。2019年の研究に参加した初級の日本語話者は3種類の音を発音し分けられておらず、全員がどの音も息の長い(VOTの長い)音で発音していました。日本語話者にとっての最初の一歩は、「息を出さない」ことなのです。
- 喉を軽く締めます。 국립국어원の辞書が濃音を「喉頭の筋肉を緊張させる音」と定義しているとおり、喉を少し構えて、母音を高めに、やや鋭く出します。ここでヒントになるのが日本語の促音「っ」です。濃音は声門をいったん閉じるので前の母音とのつなぎが硬くなり、日本語話者には促音が入ったように聞こえる、と説明する論文があります。「っ」で音を一瞬せき止めるときの詰まった感覚を思い出しながら、そこから息を漏らさずに音を出してみてください。
- 平音と激音は、息ではなく音の高さで分けます。 手のひらのテストが通用するのはここまでです。いまのソウルの話し方では、ㄱとㅋがほぼ同じ量の息を伴うことがあるからです。기・불・달は低い音から、키・풀・탈は高い音から始めましょう。Silva氏の分析も、平音を基本的に低いトーン、残りの2つを高いトーンとしていて、まさにこの形がお手本になります。
3つの手がかりがつかめてからも、つまずきやすい点が2つ残ります。1つ目は、つづりを見ただけではどの音になるか分からないことです。パッチムのㄱ・ㄷ・ㅂのあとでは平音が濃音に変わるので、학교(学校)は[학꾜](hak-kkyo)と発音されます。これはハングルを速く読むための発音変化ルールのひとつです。2つ目は、音の高さの手がかりがフレーズの頭でいちばんはっきり出ることです。単語だけでなく、韓国ドラマのセリフのような実際の会話をフレーズごと使って練習しましょう。ㄲが先に聞き取れるようになり、ㄱとㅋの区別にずっと時間がかかっても、やり方が間違っているわけではありません。日本語話者の耳はもともと濃音を別の音として聞いているので、平音と激音があとになるのは自然な順番です。
よくある質問
Q: ㄲは「っ」を付けた「カ」だと考えていいですか?
入り口としては使える考え方です。語中の濃音は前の母音とのつなぎが硬く、日本語話者には促音が入ったように聞こえることがあるからです。ただしㄲには、息がほとんど出ないこと、喉が締まること、母音が高く始まることの3つがそろっています。「っ」で詰まりの感覚をつかんだら、息を出さない部分から順に確認し、そのあとで喉の緊張を足していきましょう。
Q: 韓国人はみんな音の高さでㄱとㅋを区別していますか?
いいえ。Hyunjung Lee氏とAllard Jongman氏が2012年に男性話者16人を比べた研究では、ソウルの話者が音の高さと息の量を組み合わせて使っていたのに対し、南部のキョンサンナムド(경상남도)の話者は主に息の量に頼っていました。この方言は、もともと音の高さ(高低アクセント)で単語を区別しているためです。ソウルの中では、音の高さへの移行は女性が先導していると説明されています。
Q: なぜㄱはgとkの両方でローマ字表記されるのですか?
改正ローマ字表記法が、位置によってつづりを変えるからです。母音の前では「g」、子音の前や単語の終わりでは「k」と書きます。국밥(ご飯入りのスープ)が「gukbap」と書かれ、1つのㄱがgにもkにもなっているのはこのためです。ㅋは常に「k」、ㄲは「kk」なので、ローマ字の「k」だけを見ても、元がどのハングルなのかは分かりません。カタカナにも激音や濃音を書き分ける文字はないので、事情は同じです。
Q: 日本人がいちばん聞き分けにくい韓国語の子音のペアはどれですか?
平音と激音のペア、つまりㄱとㅋ、ㄷとㅌ、ㅂとㅍ、ㅈとㅊです。2023年の研究では、ㅂとㅍの両方が英語の同じ音のよい見本として聞き取られ、著者たちは、ある対立の2つの音がどちらも母語の1つの音に当てはまる場合、違いを聞き取れるようになるのは「非常に難しい可能性がある(could be very challenging)」と指摘しています。日本語話者を対象にした2019年の研究でも、平音と激音はそろって無声音の側に入っていました。多くの人がすでに別の音として聞いている濃音のほうが、有利な位置からスタートできます。
Q: 韓国語は母音やパッチムの発音も難しいですか?
練習は必要ですが、もっとなじみのある種類の難しさです。1988年の標準発音法は単母音を10個、二重母音を11個としていて、ㅓ(eo)とㅗ(o)のように、耳の訓練が別に必要なものもあります。カタカナではどちらもオ段でしか書けないので、ここは意識して聞き比べましょう。パッチムについては、上でリンクした発音変化ルールの記事が役に立ちます。どちらも、日本語の耳がふだん使わない手がかりを求めるものではありません。その点が、子音の3分割をいちばんの難所にしています。
音の高さを意識して練習すれば、기・키・끼は「同じ言葉を3回」ではなく、意味の違う3つの単語として聞こえてくるはずです。
特集 韓国語の発音ガイド