韓国かき氷ピンス完全ガイド:パッピンスからヨーグルトピンスまで
目次
夏のソウルでデザートカフェに入ってピンスを頼むと、隣のアイスアメリカーノより背の高い器がどんと運ばれてきます。ふわふわに削ったミルク氷の山にきなこ(インジョルミ粉)がたっぷりかかり、そのてっぺんに、あずきがひとさじ堂々と鎮座しています。ピンス(ビンス)とは、極細に削った氷にトッピングを重ねた韓国のかき氷で、スプーン二本で分け合って食べるのが流儀です。2026年は定番のあずきに加えて、全国チェーン2社がヨーグルトアイスをのせた「ヨーグルトピンス」を売り出し、選べる味がぐっと増えています。
要点まとめ
- ピンスは甘いトッピングを山盛りにした韓国式かき氷です。あずきをのせた「パッピンス」が定番で、あずき・餅・ゼリーをのせるおなじみの形が整ったのは1980年代です。
- 2026年の新顔はヨーグルトピンスです。ヨーグルトアイスのチェーン「ヨアジョン(요아정)」がミルクの雪氷に自社のヨーグルトアイスを合わせ、2026年5月22日に9種類のピンスを全国171店舗で発売しています。
- 2026年はチェーンカフェの一杯が1万ウォン台、ソウルの高級ホテルのアップルマンゴーピンスが13万〜14万9,000ウォンで、一杯を二〜三人で分けるのが基本です。
韓国のかき氷「ピンス」とは?日本のかき氷との違い
日本大百科全書によると、かき氷とは細かく削った氷や、それにシロップなどの甘みを加えたものの総称です。韓国のピンスも同じかき氷の仲間ですが、大手チェーンも昔ながらの専門店も、いまは水ではなく凍らせた牛乳を削っていて、口に入れると雪のようにふわりとほどけます。そこへトッピングを器いっぱいに盛り、みんなでスプーンを入れて分け合うのが韓国流です。ピンス(빙수、氷水)という言葉自体は「氷水」という意味で、国立国語院の辞書でも氷を入れて冷やした水が第一の語義、かき氷のデザートが第二の語義です。じつは日本語の「氷水(こおりみず)」も同じで、デジタル大辞泉には飲み水に氷を入れて冷たくしたものに続いて、削った氷に蜜やシロップをかけたもの、つまりかき氷という意味が載っています。山盛りで出てくる一杯を思うと、「氷水」とはずいぶん謙虚な名前です。英語圏のメディアやSNSでは「bingsu」とローマ字で表記されます。
韓国で夏に氷を味わう習慣は、ピンスというデザートが生まれるよりずっと前からありました。朝鮮王朝の漢陽(いまのソウル)には漢江沿いに東氷庫と西氷庫という国の氷室が二つあり、夏になると官庁のほか、70歳以上の退任した高官や施療機関の患者、さらには囚人にまで蓄えた氷が配られていました。いまも龍山(ヨンサン)の西氷庫洞(ソビンゴドン)がその名を残しています。日本にも同じ知恵があり、清少納言の時代には冬のあいだに氷を氷室へ運び込んで、夏まで保存していました。『枕草子』が「削り氷にあまずら入れて、あたらしきかなまりに入れたる」を上品なもの(あてなるもの)のひとつに数えているのも、氷が貴重品だったからこそです。
パッピンス:韓国かき氷の定番
ピンスの原点といえばパッピンスです。削った氷のてっぺんに甘く炊いたあずき(パッ)をのせ、練乳やもちもちの餅、アイスクリームを添えるのがおなじみのスタイルです。日本のかき氷でいえば、あずきの甘煮を使う「金時」(抹茶シロップなら宇治金時)が近い親戚です。ただし日本大百科全書によると、金時は器の底にあずきの甘煮を入れてその上にみぞれをのせるもので、あずきを氷の上に盛るパッピンスとは重ね方が逆になります。かき氷は植民地期のソウル(京城)ですでに一大商売で、1921年のある新聞は京城のかき氷店を417軒と数えています。いま韓国の多くの人がパッピンスと聞いて思い浮かべるのは、あずき・餅・ゼリーをのせた一杯で、この形が定着したのは1980年代です。昔ながらの作り方を守る専門店ほど材料はシンプルで、龍山のトンビンゴ(동빙고、詳しくは後述)は牛乳とあずき、餅だけで一杯を仕上げます。ごろっとした甘いあずきソースがやみつきになるという常連も少なくありません。おいしさの決め手は、あずきと氷のバランスです。どこをすくっても甘みが届き、それでいて氷があずきに埋もれない量がちょうどいいのです。
ヨーグルトピンスが2026年のメニューに加わった経緯
2026年にヨーグルトピンスを広めたのは、話題の個人カフェではなく、ヨーグルトアイスのチェーン店です。トッピングを選べるヨーグルトアイスで知られる「ヨアジョン(요아정)」は4月15日、聖水(ソンス)寄りのトゥクソム駅店を含む30店舗で6種類のピンスを先行販売しました。続く5月22日には9種類のピンスと5種類のカップピンスを全国171店舗で発売し、価格は1万ウォン台に抑えています。看板の「純粋ヨーグルトピンス」は、自社のヨーグルトアイスとミルクの雪氷に、ハチの巣ごとのハニーコムを合わせた一杯です。7月にはソルビン(설빙)もヨーグルト・ハチミツ・グレープフルーツのピンスを出し、みかんとキューブ状のチーズケーキまでのせています。いちばんの魅力は爽やかな酸味です。練乳のこってりした甘さをヨーグルトの酸味がすっと切ってくれるので、グレープフルーツやマンゴー、桃をのせたフルーツ系とも相性抜群です。ひとつ注意したいのは、どちらのチェーンもヨーグルトを凍らせて削っているわけではない点です。土台はあくまでミルク氷で、ヨーグルトはアイスクリームとして上にのっています。
ソウルのおすすめピンス店と行き方
ここで紹介するのは、ソウル市の公式観光サイトが2026年も掲載している3軒と、ホテルの贅沢ピンスに絞った短いリストです。定番のパッピンスなら、龍山の二村路(イチョンノ)にあるトンビンゴ(동빙고)へ。西氷庫駅1番出口から874m、毎日10:30〜21:30の営業です。京義・中央線の新村駅1番出口から230mのホミルバッ(호밀밭)は12:00〜22:00の営業で、ミルクピンスに作りたてのあずきと餅をのせてくれ、どちらも無料でおかわりできます。チェーンの一杯なら、弘大入口駅9番出口から126mのソルビン弘大(ホンデ)店が深夜0時まで開いています。いまも一番人気はインジョルミソルビンで、ミルクの雪氷がきなこにすっぽり埋もれています。とことん贅沢したいなら高級ホテルへ。5月からアップルマンゴーピンスが登場し、2026年の価格は新羅ホテルが13万ウォン(前年11万ウォン)、フォーシーズンズ・ソウルが据え置きの14万9,000ウォンです。カフェをはしごするならソウルのカフェ巡りガイドで聖水や益善洞(イクソンドン)のルートを、拠点選びに迷ったらソンスとホンデどっち?の比較ガイドをチェックしてみてください。
自宅でできる韓国かき氷ピンスの作り方
家で作るのは意外と簡単で、牛乳を凍らせて削り、盛りつけるだけです。卓上かき氷器ならカフェに近い口どけになりますが、ミキサーでは粗すぎます。冷やした器に氷を重ねて練乳をかけ、パッピンスならあずきをのせます。ヨーグルト版はチェーンのまねをするのが近道で、下にミルク氷、上にヨーグルトアイスとカットフルーツ、あればハチミツを少しかけます。盛りつけたら、とにかくすぐに食べてください。溶けかけのかき氷ほど悲しいものはありません。
よくある質問
Q: bingsuとは?
「bingsu」は韓国語の빙수(ピンス)をローマ字で表記したもので、英語圏のメディアやSNSでよく使われる呼び方です。中身は日本語で言う「ピンス」とまったく同じで、凍らせた牛乳を極細に削り、あずきやフルーツをのせた韓国式かき氷を指します。
Q: ピンスとパッピンスの違いは?
ざっくり言えば、パッピンスは「あずきをのせたピンス」です。ピンスは韓国式かき氷の総称で、パッピンスはそのうちの一種、削った氷に甘く炊いたあずき(パッ)をのせたものを指します。パッピンスはすべてピンスですが、ヨーグルトやマンゴーのピンスはパッピンスではありません。パッピンスがあずきの元祖、ピンスはそれを含む大きなカテゴリー、という関係だと考えると分かりやすいです。
Q: ヨーグルトピンスはヘルシー?
そうとは限りません。ソルビンは2026年のヨーグルト・ハチミツ・グレープフルーツのピンスを840kcalと表示していて、パッインジョルミソルビンの710kcalより高めです。ヨーグルトがアイスクリームとして入り、ハニーコムやチーズケーキものるためです。三人で分ければ普通のデザートですが、一人で食べれば一食分に近いカロリーです。
Q: ソウルのピンスの値段はいくら?
2026年はヨアジョンの新メニューを含め、チェーンカフェの一杯が1万ウォン台で、一杯で二〜三人は十分に満足できます。ホテルのアップルマンゴーピンスは別格で、この夏は13万ウォン(新羅ホテル)から14万9,000ウォン(フォーシーズンズ・ソウル)です。どちらを選ぶにしても、友だちを誘ってスプーンを二本以上もらうのが正解です。
ピンスは、ひとつの店に通い詰めるより、いろいろ食べ比べるほど楽しくなるデザートです。ある日の午後は歴史を感じるパッピンス、次の日は酸味が爽やかなヨーグルトピンスと、日替わりで試してみてください。ソウルの夏が終わるころには、あなただけの推しの一杯が決まっているはずです。カフェ巡りの途中で温かくてもちもちの甘いものが恋しくなったら、バタートックへの寄り道もおすすめです。

特集 韓国の郷土料理と旬の味