文化

韓国のアパートはなぜ狭い?間取りと84㎡・坪の正体

夕暮れのマンション棟の間にある、噴水のある庭園
目次
  1. 韓国のアパートはなぜ狭いのか:地理・法律・世帯の事情
  2. 韓国の「坪(ピョン)」とは?禁止されても消えない単位
  3. 専用面積と供給面積はどう違う?表示の数字が隠しているもの
  4. 韓国のアパートの間取りと広さ早見表:㎡・坪・畳
  5. バルコニー拡張で、韓国のアパートは本当に広くなる?
  6. よくある質問

韓国の物件サイトを開くと、その部屋は「84㎡」と書かれています。電話口の不動産屋は同じ部屋を「34坪」と呼び、住んでいる本人は「まあ30坪ちょっとかな」と答えて、お湯を沸かしに立ってしまいます。ひとつの部屋に、数字が三つ。しかも、メジャーで床を測って出てくる広さと一致するものはひとつもありません。「韓国のアパートは狭い」「間取りが窮屈」という印象の多くは、このずれから生まれています。もっとも、本当に狭い部分もたしかにあって、そちらは理由をはっきり挙げることができます。

早わかり

  • 韓国の物件表示に出ている数字は 전용면적(専用面積)で、玄関の内側だけの床面積です。84㎡と書かれた住戸は、数字から想像するより広く使えます。
  • 1坪(평、ピョン)は3.3058㎡で、日本の坪と同じ大きさです。法定単位ではなくなって数十年経ちますが、不動産屋も家主も隣人も、今も坪で話します。
  • 本当に狭い理由は三つあります。2024年に人口の50.8%が集まっていた首都圏の土地不足、デベロッパーが標準にしている85㎡以下という線、そして同じ調査で平均2.19人まで小さくなった世帯です。

韓国のアパートはなぜ狭いのか:地理・法律・世帯の事情

答えの半分ほどは、測り方が生む錯覚です。広告の84㎡は、玄関の内側の床しか数えていません。残りの半分は、地理と法律と人口構成という三つの事情が重なった結果です。

最初は土地の問題です。2024年の人口住宅総調査によると、首都圏には国の人口の50.8%にあたる2,631万人が住んでいます。ソウルに絞ると、国の人口密度指標では2025年に1平方キロメートルあたり15,432人です。半日もあれば車で横切れてしまう地域に国民の半分が暮らしていれば、ゆとりのある間取りの家はまず建ちません。建つのは高層の団地で、高層の団地には同じ規格の住戸がずらりと並びます。同じ調査では、全住宅のうちアパートが65.3%を占めていました。

二つ目は法律です。韓国の住宅法第2条は 국민주택규모(グンミンジュテッキュモ、国民住宅規模)を「専用面積85㎡以下の住宅」(首都圏外の農村部にある邑・面では100㎡以下)と定めていて、税の扱いも公的融資も分譲申込のルールも、この一本の線で分かれます。そのためデベロッパーは、線の手前ぎりぎりまで広げたところで設計を止めます。物件サイトで84㎡ばかりが目につくのは、偶然ではありません。国民住宅規模の枠に収まるいちばん大きな住戸がこれで、建設業界全体がこの上限を前提に間取りを組み立ててきたのです。

三つ目が、世帯の小ささです。同じ調査の平均世帯人員は2024年に2.19人で、一般世帯の36.1%にあたる804万世帯が一人暮らしでした。三世帯に一世帯以上がひとりで暮らす国で140㎡の家族向け住戸ばかり建てるのは、どう見ても分の悪い賭けです。お祝いのお金の行き先も同じ方向を向いていて、韓国の結婚式で手渡されるご祝儀は、そのままこうした住戸の保証金に回ることが少なくありません。住戸がここまで小さくまとまったのは、韓国がなぜ急成長できたのかという物語の、いわば住宅編でもあります。一世代で都市化を駆け抜けた国は、集まってきた人たちをとにかく急いで住まわせなければなりませんでした。上へ積み上げるほかに、現実的な道はなかったのです。

韓国の「坪(ピョン)」とは?禁止されても消えない単位

坪(평、ピョン)は1坪=3.3058㎡の伝統的な面積単位で、大きさは日本の坪と変わりません。日本の坪も六尺四方、約3.3058平方メートルです。ただし韓国では、ずいぶん前から法定の計量単位ではなくなっています。それでも、人々の話し方は少しも変わっていません。

韓国が国際単位系を法定の計量標準にしたのは1964年のことです。계량에 관한 법률(計量に関する法律)は、法定外の単位を計量に使うことも広告に使うことも、はっきり禁じています。取り締まりは段階を踏んで強まってきました。面積(㎡)と重さ(g)を日常の商取引に定着させる取り組みが始まったのが2007年で、過料はまず日刊紙の不動産広告に載った坪表記に科され、2013年には点検の対象がウェブサイト、不動産事務所、街頭の横断幕、モデルハウスにまで広がっています。2026年現在、施行令の過料基準(別表28、2024年7月改正)では初回60万ウォン、2回目120万ウォン、3回目以降200万ウォンです。

それでも、麻浦(マポ)でも水枝(スジ)でも、부동산(ブドンサン、不動産事務所)のガラス窓に貼られたホワイトボードは坪で書かれています。契約書に平方メートルが並ぶのは、法律がそれ以外を認めないからです。会話に坪が残るのは、そのほうが部屋の広さを体で思い描けるからです。

法律で単位を切り替えたのは、日本も同じです。日本では尺貫法が1958年12月末日をもって原則として廃止され、取引や証明には使えなくなりました。このとき例外とされた土地・建物関係も、1966年3月末で廃止されています。今の日本の不動産広告も、「不動産の表示に関する公正競争規約」の施行規則で「面積は、メートル法により表示すること」と定められています。

専用面積と供給面積はどう違う?表示の数字が隠しているもの

전용면적(チョニョンミョンジョク、専用面積)は、玄関の内側の床です。공급면적(コングプミョンジョク、供給面積)は、そこに廊下・階段室・エレベーターホールの持ち分を足したものになります。韓国の「住宅供給に関する規則」第21条は、分譲公告で住戸ごとの面積を示すときは専用面積で表示するよう定めていて、共用部分は別の項目として書き添えることしか認めていません。全部を足して見栄えのよい数字をひとつだけ載せることは、できない仕組みです。日本でも、不動産の表示に関する公正競争規約の施行規則が、マンションの面積は専有面積で表示するよう定めています。考え方は、韓国のルールとかなり近いと言えるでしょう。

建設中のソウルの高層アパート群、専用面積と供給面積の差を物語る光景

韓国語何が入るか誰の床か
전용면적 専用面積玄関の内側すべて。外壁の内側の面から測るあなただけのもの
주거공용면적 住居共用面積同じ階の廊下・階段室・エレベーターホール同じ階と共有
공급면적 供給面積専用面積+住居共用面積「坪」の数字の正体
계약면적 契約面積供給面積+駐車場・管理事務所・ジム管理費のかかる範囲すべて

韓国の物件ポータルが真っ先に出すのは専用面積です。法的に意味を持つのがこの数字だからです。つまり「84㎡」の一行から思い浮かべた部屋は、すでにいちばん控えめな、玄関の内側だけの広さということになります。不動産屋が口にする坪のほうが、数字としては大きく出ます。初めての人が驚くのは、この二つの習慣が並んでいても誰も混乱しないことでしょう。書類は厳密な数字で、会話は少し大きめの数字で。どちらがどちらなのかは、みんな承知しています。

韓国のアパートの間取りと広さ早見表:㎡・坪・畳

専用面積84㎡を畳に換算すると約52畳分、新しい団地の主力である59㎡は約36畳分です。日本の不動産広告では、畳1枚当たりの広さを1.62平方メートル以上として使う決まりがあり(不動産の表示に関する公正競争規約施行規則)、下の表の畳数はこの1.62㎡で割った目安です。

専用面積(전용면적)畳に換算(1畳=1.62㎡)通称だいたいの想定
39㎡約24畳16坪一人暮らし、広めのワンルーム
49㎡約30畳20坪二人暮らし、寝室1つ
59㎡約36畳24坪二人か小さな家族、3部屋
74㎡約46畳30坪3人家族
84㎡約52畳34坪家族向けの定番
114㎡約70畳45坪大型・プレミアム帯

3列目の坪は、隣の専用面積ではなく供給面積から換算した数字です。隣り合う列どうしで計算が合わないのは、そのためです。広さの感覚をつかむなら、法律上の下限と比べてみるのが早道でしょう。韓国の最低住居基準は2011年の改正以来変わっておらず、2026年現在も単身世帯の最小限を14㎡(約9畳)としています。表でいちばん小さい39㎡の住戸でも、その3倍近くあります。数字だけでは実感がわかないなら、韓国の人たちがこうした住まいでどう暮らしているかをのぞいてみてください。家に浴槽がない分、近所の銭湯が風呂の役目を引き受けている、そんな日常が見えてきます。

バルコニー拡張で、韓国のアパートは本当に広くなる?

広くなります。韓国の物件表示が実物より小さく見える最大の理由も、このバルコニー拡張です。2005年12月2日に施行された建築法施行令の改正によって、バルコニーを内装して居間・寝室・収納として使うことが、新築だけでなく既存の団地でも合法になりました。条件は国の定めるバルコニー基準を満たすことで、その日より前に許可を受けたアパートは、避難空間か隔壁も備えなければなりません。

バルコニーの面積は 서비스 면적(ソビス・ミョンジョク、サービス面積)と呼ばれ、専用面積の計算にはまったく入りません。合法的に拡張すれば、暖房が効いて家具も置ける本物の床が増えるのに、広告の数字は1㎡も変わらないのです。同じ84㎡と表示された二軒で、部屋ひとつ分ほど広さの印象が違うことがあるのはこのためです。

日本の分譲マンションとは、ここが大きく違います。国土交通省のマンション標準管理規約では、バルコニーは「共用部分」の一部とされ、その住戸の持ち主に認められているのは、排他的に使える専用使用権です(実際の扱いはマンションごとの管理規約によります)。韓国では、その同じ場所が合法的に部屋の一部になります。

2000年代半ば以降の新築は、ほとんどが拡張を前提に図面が引かれていて、モデルハウスで見て回るのもたいてい拡張済みの住戸です。価格を比べる前に、その住戸が 확장형(ファクチャンヒョン、拡張型)か 비확장형(ピファクチャンヒョン、非拡張型)かを確かめてください。住まいの広さを左右するという点では、あとからどんなリフォームをするより、この違いのほうが大きく効いてきます。

よくある質問

Q: 84㎡の韓国のアパートは何畳くらいですか?

専用面積の84㎡は、1畳=1.62㎡で割ると約52畳分です。これは玄関の内側だけの床なので、合法的に拡張したバルコニーはこの上に加わります。広告の数字には出てこないため、実際に暮らせる広さはたいていもっと広くなります。

Q: 34坪は何平方メートルですか?

およそ112㎡です。坪の数字はふつう専用面積ではなく供給面積から計算するためで、同じ住戸が物件ポータルでは84㎡と表示されます。

Q: 法定単位ではないのに、なぜ韓国では坪を使い続けるのですか?

習慣に加えて、坪が部屋の体感とうまく結びついているからです。平方メートルは1964年から法定の標準で、坪で広告すれば過料の対象にもなります。それでも、二世代にわたって坪で家を思い描いてきた人たちは、そのまま切り替えませんでした。契約書は㎡、会話は坪です。

Q: 59㎡はソウルで二人暮らしに十分ですか?

十分です。市内でもっとも一般的な家族向けの間取りの一つで、畳にして約36畳分の中に、たいてい3部屋と浴室が収まります。そこに面積に数えられない拡張バルコニーが加わるので、ソウルの感覚ではごく普通の広さです。

Q: バルコニーは韓国のアパートの表示面積に含まれますか?

含まれません。バルコニーはサービス面積で、専用面積の外側にあります。だからこそ、合法的に拡張したバルコニーは、物件情報の数字を変えないまま、使える居住空間だけを増やせるのです。

Q: 韓国のアパートはなぜどこも同じ間取りなのですか?

開発業者がみな、同じ法律上の線に合わせて設計するからです。国民住宅規模の上限85㎡の手前まで広げるほど有利なので、59㎡と84㎡の間取りが団地から団地へと繰り返されます。そこにアパートの数の多さ(2024年には全住宅の65.3%)が重なって、ひと握りの間取りが国の標準になりました。

手渡された数字が専用面積なのか、供給面積なのか、それとも表示に出てこない拡張分なのか。そこを見分けられるようになると、韓国のアパートの間取りは「狭い」というより、法律と数字に合わせてぎりぎりまで計算されたものに見えてくるはずです。

特集 現代のライフスタイルと日常